NintendoDS mk2 - ニンテンドーDSの参加型レビューサイト

GOOD!

米国に舞台を据え、劇画風に描かれた登場人物、ジャズ風の渋いサウンド、さらにはDSを縦に持ち左右見開きでプレイする方法など、ゲーム全体にスタイリッシュな工夫がほどこされています。

３Ｄグラフィック全盛ともいえる現代、あえて手書きの味わいを前面に押しだした絵柄には、チャレンジ精神だけではなく、一種独特なぬくもりと新鮮さを感じます。
ストーリーの方も、こういったゲームには珍しく大人向けの内容となっており、ゲームの中で描きだされる人間ドラマは、大人の鑑賞にも耐えうる質の高さを持っています。

シナリオの力でぐいぐいとプレイヤーを引っぱっていくタイプのゲームなので、会話シーンにはかなりのボリュームが割かれており、小説のような濃密なテキストが楽しめます。
しかしその反面、ふだん小説をあまり読まないタイプの人には、逆にその点がわずらわしく感じられるかも知れません。

豊富な対話シーンにあわせ、二人の人物がDSの左右２画面で向きあい話をするスタイルは、なかなか良くできたアイデアだと感じました。

ゲームの内容にあわせ抑制されたサウンドは、このゲームのドラマに、シリアスな説得力と落ちついた雰囲気を与えています。
ゲームのプレイ中、聞き流すだけでは地味に感じられる曲も、サウンドテストでジックリと聴けば分かるとおり、非常にていねいな音作りがされています。
とくに音質に関しては、DSでもトップクラスの品質と言えるでしょう。
そのため、このゲームをプレイするさいは、ぜひ音質の良いヘッドホンの利用をオススメします。

BAD/REQUEST

ストーリーの本筋とはあまり関係のない、お使いのような依頼や、取って付けたようなパズルなどが目につきます。

また、ドアを開けたり電話を取ったりするのに、いちいち扉アイコンや拡大鏡アイコンをタッチし、拡大画面 （探索画面） に切り換えなければならない点は、操作性が悪くイライラさせられました。
電話のベルを無視して部屋を出られるわけではないので、ベルが２回ほど鳴ったら、パッと電話中のシーンに切り換えてもかまわないはずです。 （ゲームの終盤では、実際にパッと電話中のシーンに切り換わるところがあります）

ゲームの冒頭では、話がなかなか進展せず、退屈に感じられるところがあります。
主人公が独自に捜査している事件の概要についても、もっと、ゲームの頭の方で説明してほしかったと思います。

COMMENT

こういった大人向けのゲームの登場は、おおいに歓迎したいと思います。

グラフィックや音楽などの外見だけではなく、作品の中身自体も、ある程度大人の観賞に耐えられる内容になっている点は、高く評価して良いでしょう。
子供にはピンとこない部分も多いかも知れませんが、さまざまな苦い経験を積んだような大人にとっては、胸に染みるようなセリフもいくつかあったりします。

そもそも、私たちの多くは、子供の頃からウソはつくなと教わってきますが、このゲームでは、ウソをつかないことにはゲームが進められないうえ、場合によっては、ウソをつかないとゲームオーバーになってしまうという憂き目にも会います。

ゲーム中、主人公は子供に問われ、自分がウソをつくこともあると認めていますが、それでもウソをつくのはいけないと子供を諭すあたりは、現実味をおびたほろ苦さを感じさせられました。

このゲームの骨格となる謎解きは、ストーリーの流れ自体に盛り込まれています。
そのため、ゲームとして中心となるのは、周囲にいる人々との会話といって良いでしょう。
タッチペンを使ったさまざまな作業やパズルは、あくまでも、枝葉やつなぎといった感じのところがあります。

したがって、ゲームをドラマとして楽しめるような人には、満足できる内容となっていますが、一方、ゲームに緊張感や達成感を求めるような人には、この作品では不満が残るかもしれません。

自分の場合は、小説や映画のように、ゲームもドラマとして楽しめれば良い方なので、この作品にはかなり満足することができました。

サウンドテストの曲をすべて聴けるようにしたり、よりハッピーエンドに近いエンディングを見るためには、最低、２周以上はプレイする必要があるようです。