NintendoDS mk2 - ニンテンドーDSの参加型レビューサイト

GOOD!

同じシング開発・任天堂発売の『アナザーコード』（以下『アナザー』）と比較しつつ述べる。
・ボリュームの大幅増加。『アナザー』と比べて、クリア時のプレイ時間は倍以上だった。
・シナリオの充実。パズルがメインで、物語はあってないようなものだった『アナザー』とは対照的に、今回はストーリーが前面に押し出されている。主人公が、ホテルの宿泊客や従業員の抱える謎を解き明かして彼らの心を救いつつ、自らの目的に近づいていくという展開は、コピーどおり（広義の）「ミステリー」にあたるといってよい。前科持ちのボーイや父親に反発する女の子など、登場人物も魅力的で、ゲームを進めるにつれて愛着が沸いてくる。全編ホテル内でゲームが展開するにもかかわらず、電話という外部との接点を設けることで、プレイヤーに閉塞感を感じさせないのは見事。また、次にどこへ行くべきかも適宜示唆されるので、台詞さえ読み逃さなければ（謎解き以外では）詰まらずにすむ。
・キャラクターグラフィック。モノクロのスケッチ風の絵がぐりぐり動きまくるという特異なスタイルだが、これが一見雑っぽいようで、その実巧みに臨場感を醸し出している。その魅力は雑誌等のスクリーンショットではうまく伝わらない。興味を持ったら公式サイトへ。
・音楽。シナリオの雰囲気を反映した上質の楽曲が、オープニングからプレイヤーを一気に作品世界へ没入させてくれる。曲数が多く、渋めの曲をメインに、コミカルなものまでバラエティ豊かに取り揃えられているのもよい。個人的には「バイオレット・スカイ」「セレニティ・ナイト」が特にお気に入り。ゲーム内のサウンドテストで、既に聴いた曲を自由に再生できるようになっているが、これほどの出来なので、ぜひサントラを発売してほしい。なお、本体の内蔵スピーカーはあまり音質がよくない。イヤフォン等の使用を推奨する。
・細かいことだが、シングルクリックでの選択時に対象物がハイライトされること。今どこを調べているのかがはっきり分かるため、ゲームを円滑に進めることができる。

BAD/REQUEST

致命的な不満はなく、どれも「敢えていえば」程度のものではあるが――
・シナリオが増えた分、パズルの密度は『アナザー』よりかなり薄い。今回は、あの「写真立て」のような超絶ギミックもないため、斬新さにおいても後退した印象を受ける。
・ストーリーの落としどころとしては、少々拍子抜けというか「大山鳴動して……」という印象。また、未回収と思われる伏線や、ちょっと不自然な展開もないではなかった。
・いちいちノブをダブルクリックして扉を開けるのが面倒。客室や従業員の部屋以外の扉は、鍵さえ開いていればマップ上からコマンド一発で開くようにしてもよかったのではないか。
・メッセージ送りの際右下隅をタッチしなければならないが、その範囲が少々狭すぎる。
・マップ上の移動が少々遅いかも。遠くをタッチすればそうストレスは感じない速度になるが。
・プレイに緊張感を出すためゲームオーバーを用意したという意図は理解できる。しかし、あの何ともいいがたい脱力感あふれる展開は、受け付けない人もいるのではないか。
・ストーリー分岐などは用意されておらず、2周目以降のプレイで変化する部分もさほど多くないようなので、何度も繰り返し遊ぶのには向かない（ゲームオーバー探しくらい？）。
・せっかくのメモ機能（今回は消しゴムもついた）だが、プレイヤー自身が活用する機会は少ない。『プロジェクトハッカー』のように話の途中でメモを取れるとよかったのだけど。

COMMENT

ポイント＆クリック型アドベンチャーゲームという『アナザー』の基本線をそのままに、批判を受けた点を徹底して改善した作品。結果的にはかなり異なった内容に仕上がっているため、むしろ『アナザー』をプレイして「ぜんぜん『推理小説』じゃない、騙された！」と叫んだ人にこそお薦めだ。とはいえ、ハードボイルドっぽい外観と裏腹に、プレイ感覚は非常に爽やかだったりする。血の凍る殺人事件も本格推理的な要素もないので、じっくりと腰を据えて人間ドラマに浸るつもりでどうぞ。一方、『アナザー』のパズル乱れ打ちが気に入った人は、いくぶん物足りなさを覚えることになるかもしれない。個人的にはどちらかといえば本作のほうが好みなので、次もこの路線を希望する。主人公カイルがNYPD時代に関わった事件など、ぜひ読んでみたいと思う。ただ、今回はちょっと甘口すぎるようにも感じたから、できればレーティングCくらいの内容で……。最後に、これから購入される方に老婆心ながら忠告を。この手のゲームは、謎を前にしてあれこれと考えることこそが醍醐味。攻略サイト等の利用は必要最小限にとどめられますよう。