NintendoDS mk2 - ニンテンドーDSの参加型レビューサイト

GOOD!

■オリジナリティー

マッピングの強制。小学生のころＷｉｚａｒｄｒｙをプレイするのに、
フロッピーディスクとノートと鉛筆という準備が定番だったが、
いつからかオートマッピングにならされてしまった。
それを否定するわけでは無いが、当時「やむなく」ノートに書いていた地図、
これが一つのゲーム性として提示されるとこれほど熱中するとは思わなかった。

■グラフィックス

ＦＦ３以降、ＤＳタイトルにも美しい表現が増えてきた。
過剰な演出、グラフィックを求めるものではないが、息づいているような
樹海の演出は非常に美しく、排他的な迷宮の凄みを伝えてくれる。
魔法のエフェクトもかなり綺麗。

■音楽

華美に装飾された、名曲を生み出そうという意識は見られないが、
ゲームの世界を演出するにふさわしく、聴いているうち、この音楽以外
このゲームにはマッチしないのではと思わせる。
迷宮序盤のフィールド音楽など、未踏の地を行く不安感と探究心を
静かに煽ってくれる。個人的に相当好きな部類に入る。
実は一曲が中々に長くて聴き応えも十分、戦闘曲の展開は素晴らしい。

■熱中度

地図を作成して自己満足、キャラクターを育てて自己満足、
迷宮を徘徊する強大なシンボルエネミーを倒して自己満足、
自らのデータが出来上がっていく、徹底した内側への喜び、
ワールドワイドに広げていくだけがゲームの進化では無いと思わせてくれる。
携帯ゲームで引きこもれる。

■快適さ

余分な演出の排除により、何かにつけ待たされるということが無い。
思ったことを即実行できるから何度でも触りたくなる。
熱中度の高さの要因でもある。

■ストーリー

詳細は控えるが、終盤の舞台は個人的にときめいた。
一階ごとにサブタイトル的な名前が付いているが、自分の冒険している場所の
性格を端的に示していてくれて、想像力を刺激する。
昨今の作りこまれたキャラクターの、しかし自分には興味の無い人間の人生を
何十時間かけて辿るＲＰＧの傾向に辟易していたので、このゲームの主人公達の
無個性さは返って無類の喜びだった。
無個性が全てでは無く、上記のような作品にも個人的に満足できるものはあるが、
５点という特別な点数をあえて付ける意味を今だからこそ感じる。


■難易度

シンボルエネミーはその多くが凶悪な強さを持っており、
迷宮探索に残されたメンバーの体力などと相談しながらぶつかっていくが、
結構な確立で返り討ちにもあう。
その緊張感がまた善い。

BAD/REQUEST

戦闘のスキップを左手でも出来るようにして欲しかった。
ある程度気を抜いてよい戦闘のターン中に、ちまちまと地図を書くのだが、
戦闘の早送りがＡボタンでしか出来ないので、左手が空いてしまう。
左手では地図が書きにくい。右脳を鍛えるか。

セーブデータが一つ。

人に貸すことも、再度一から挑むことも、
手塩にかけた現在のデータと引き換えになる。
余りに忍びないではないか。
家族、兄弟が本作品に触れたいと願ったら、
同じゲームが２本並ぶことになるのだろうか。
ＤＳは最早一人一台の様相を見せ始めているが、
ソフトくらい一家に一本の価値付けとして欲しいものである。
これは製作側の配慮すべき一つの礼儀だと思う。


アイテムの持てる数

６０個はいかんせん少ない。本作品において迷宮で集める素材というものが
商店の品物になり、現金になるのだから、余裕は必要だったろう。
いまだ探索を続ける体力的余裕が有りながらも、この制限の為に帰還を
余儀なくされたことが何度もある。
長く潜れば潜るだけ戻り帰った安心と充足は大きい。
久しく間をおいて再会した陽光の眩しさは
迷宮RPGの一つの魅力ではないだろうか。

中断セーブが無い

一度の迷宮探索でなるべく多くの物を得たいのだが、上記のアイテム制限と
並んで一時セーブの無いことがそれに歯止めをかけている。
DSのスリープ機能もあるが、電源を入れたゲーム機を鞄に押し詰めて
他の用事も無い物だ。携帯機なのだから尚更だろうと思う。

COMMENT

回顧的名作なのか。
容量の限界と思しき制限の数々はまったく残念の極みだが、
初期のＷｉｚａｒｄｒｙに十分トリップできる自分としては
最高クラスの作品である。
同社の作品、ＢＵＳＩＮも非常に楽しめたような自分だから楽しいのか、
と疑問も持つが、この近年のＲＰＧと比して殺風景なドラマの無い世界に
自ら想像の翼を広げ、物語と地図を記して行くこんなゲームが受け入れられると
自分にとっては非常に住み心地が善くなる。
しかし、セーブデータが一つしか無いのは面白くない。
門外の要項だが、このタイトルの満足感が５点足り得なかったのは、
この一本で、私自身より他に誰一人として満足させられなかったからである。